地獄船
☆☆☆

「99……100‼」


俺と綾は同時にそう言い、その場に倒れた。


大量の汗と鼻水と涙で顔はグチャグチャだ。


腕は丸太のように重たく、ピクリとも動かせない。


腕立て伏せが開始されてから何時間経過しているのかもわからない。


だけどとにかく、俺たちは100回をこなしたのだ。


「よく頑張ったな」


結局、俺たちより早くに追加の90回を終わらせた浩成がそう言って来た。


「お前、そんなに体力があるなんて知らなかったぞ」


そう言うと、浩成は自慢げに「ロッククライミングをしてるからな」と、笑って見せた。


「なんだかんだで、できたじゃねぇかぁ」


鬼が拍手しているのが聞こえて来る。


「ってことは、今回は死者なしかぁ」


寂しそうに聞こえて来た鬼の声に、つい笑顔になった。


ざまぁみろ、今回は俺たちの勝ちだ。


そう言ってやりたい気分だった。
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