地獄船
「浩成、どうした?」


さっきから浩成は青ざめている。


正座なんて、腕立て伏せに比べれば可愛いものなのに。


「お、俺……」


浩成が何かを言おうとしている。


その言葉にかぶさるようにして、ゲーム開始の笛が鳴ったのだった……。


「浩成?」


俺と綾は合図と共に正座を開始した。


しかし、浩成は茫然としてつったったままだ。


「お、俺……正座はできないんだ」


浩成が震える声でそう言った。


「できないって、なんで?」


綾が聞く。


「だって俺、膝の骨が歪んでて……」


浩成の声が小さくなる。


目から大粒の涙がボロボロとこぼれ出す。
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