地獄船
「なんだよお前、ゲームはもう始まってるんだからなぁ!」


近くにいた子鬼が浩成に不満の声をぶつけた。


「ちょ、ちょっと待て! 浩成は膝が悪いんだ。このゲームには参加できない!」


慌ててそう言うと、鬼が眉を寄せて浩成を見た。


「なんだよリタイアってこと?」


鬼の言葉に浩成は強く首を振った。


「い、嫌だ……」


リタイアはしたくない。


だけど正座もできない。


浩成の顔は涙でグチャグチャに歪んでいく。


「じゃあちょっと正座してみろよ~」


子鬼が浩成に近づいていく。


ジャンプして浩成の肩に手を置くと、浩成は体のバランスを崩して床に膝をついた。


「そのまま座ればいいんじゃん」


「でも、できないんだ。なぁ頼む、次のゲームで頑張るからさぁ……」


浩成がどうにか鬼を説得しようとしているが、それが通用するとは思えない。
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