地獄船
「ほら、ちゃんと座れよ!」


子鬼が浩成の足を蹴とばして声を荒げる。


「頼むよ。これじゃ俺の足、壊れちゃうよ……」


「グズグズとうるせぇなぁもぉ!」


子鬼が苛立った声でそう言った時だった。


ミヅキがスッと立ち上がったのだ。


メイド鬼が慌ててストップウォッチを操作する。


「限界」


「は?」


鬼がミヅキに聞き返す。


「言ったでしょ。もう限界だって」


「……はぁ? もしかしてお前、あの男庇ってる?」


「そんなんじゃない。足が痛くて限界だって言ってんの」


ミヅキは表情を変えずにそう言った。


足が痛いとか、しびれていたりするようには見えない。
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