地獄船
俺は綾から離れ処置の様子を呆然と見ていることしかできなかった。


心電図が徐々に弱まって行く。


「患者が急変だ! ご家族に連絡を!」


急に室内が騒がしくなる。


「くそ! まだ早いぞ。そっちへ行くには、まだ若すぎる!」


医師が綾に話しかけながら心マッサージを始めた。


綾が鬼の船に乗り込んでいく映像が過った。


子鬼たちに囲まれ、あっちの世界へ行くと知らずについていく綾。


「あ……や……」


声をかけることもままならなかった。


綾が死ぬ。


俺のせいで、綾が死ぬ。
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