地獄船
押さえつけられて腕の痛みに耐えかねて、俺は力を抜いてしまった。


子鬼の手がパッと離れる。


自分の力を自分でちゃんと理解しているようだった。


あのままじゃ、きっと俺の腕は折れていただろう。


「もうちょっと楽しもうよ、お兄ちゃん」


子鬼はそう言うと小さな白い牙を覗かせて笑った。


俺は返事をせず、視線を広間へとうつした。


その時だった。


ゴンドラから人が吹き飛ぶのを見た。


体は大きく空中を舞い、広間の柱に激突した。


グチャッという嫌な音が響き、一瞬周囲は無言になった。
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