地獄船
胃の中のものが全部なくなった時、俺はようやく顔を上げた。


子鬼たちは小春の体とイブキの体を食べている。


「早人、大丈夫」


いつの間にか近くまで来ていたのか、綾が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。


俺は慌てて自分の体で吐いた物を隠した。


「だ、大丈夫大丈夫」


そう言い、綾を吐しゃ物から遠ざける。


「俺たちは食事ってことか」


青ざめた顔の文夫がそう言った。


「そう言う事なんだろうな……」


だとすれば、他の人たちはすでに食べられてしまっているのかもしれない。


これだけの鬼たちを満腹にするためには、何百人という犠牲が出ていても不思議じゃなかった。


「これから俺たちはどうすればいいんだ?」


文夫にそう聞かれても、俺はなんの返事もできなかったのだった。
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