地獄船
小恋は不安そうな視線を審査員の子鬼たちへ向ける。


静かな広間の中、不意に拍手が起こった。


鬼が大きな両手でバンバンと拍手しているのだ。


それを引き金にしたように、広間内に鬼たちの拍手が響き渡る。


「ブラボー!」


「すげぇなお前!」


「まじ、神ってんだけど!」


小恋を絶賛する声が聞こえ、審査員たち全員が○を上げる。


その評価に俺はゆるゆると息を吐き出した。


小恋は満点をはじき出したのだ。


安堵すると同時に、緊張が走った。


俺はどうだろう?


考えてみても小恋に負けないくらいの特技なんて、持ってない。


残っている全員がきっとそうだろう。


みんなの顔には安堵と緊張の色が見えていた。


「すごかったよ、小恋」


戻って来た小恋に綾が声をかける。
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