地獄船
小恋は頬を上気させてほほ笑んだ。


やり切ったという雰囲気が漂っている。


浩成の評価御を上回った事で、小恋は生き延びることもできるだろう。


「ありがとう綾」


「一体どこであんな早着替えを習得したの?」


「自宅だよ。あたし一人っ子だからいつも家族から着せ替え人形みたいにされてたの。その内着替えする速度がどんどん早くなって行って、今ではどこでだって着替えられるくらいになった」


両親からの愛情が、今の小恋を救ったと言うわけか。


「次、3番目は誰だ?」


鬼の言葉に文夫が体を緊張させた。


小恋の後に特技を披露しなきゃならないなんて、可愛そうなやつだ。


俺は軽く文夫の肩を叩いた。


その青ざめた顔へ向けてほほ笑む。


「いつも通りにやれば大丈夫だ」


そう言うと、文夫は微かに頷いた。


まぁ、文夫の特技がなんなのか俺は知らないけれど。
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