地獄船
緊張している文夫は両手両足を同時に動かして、広間の中央へと向かって行った。


その様子だけでも子鬼たちから笑い声が起こっている。


子鬼たちが上機嫌なのは悪くない兆候だ。


文夫が広間の中央に立ち、鬼を見た。


鬼は優雅に赤ワインを飲んでいる。


「バック転、します!」


緊張した声で文夫が言った。


バック転……?


俺は瞬きをして文夫をみた。


文夫が運動神経がいいなんて、知らなかった。


子鬼たちから笑い声が消えて、文夫が体勢を整える。


「行きます!」
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