地獄船
☆☆☆

ほんの数分の時間が永遠のように長く感じられた。


音楽も何もない中、俺はダンスを踊っていた。


ボディウェーブの連続技だ。


体全体を波打たせるようにしてダンスする。


グネグネと動くそれは骨が消えてなくなってしまったかのように見える。


指の先からなみが始まり、足の指先まで流れて行く。


右から左へ左から右へ。


体を波にゆだねているタコのように動き回る。


子鬼たちが俺の真似をしようとダンスを始めるが、元々体が硬いのかうまくいかない。


筋肉の塊でできたその体は人間とは違っていた。


やがて広間の中には拍手が沸き起こっていた。


「やっべぇ。あいつ神ってるわぁ」


ギャル鬼がそう呟く声が聞こえて来た。


拍手は次第に大きくなっていく。
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