地獄船
文夫は星斗の親指を生き抜いたのだ。


いや、正確には親指の形をした指サックだ。


左手の中にハンカチを押し込むふりをしながら、本当は親指の形をした指サックを隠し持っていて、その中に押し込んでいっていたのだ。


最後に右手の親指でハンカチを押し込めば、指サックは親指にピタリとはまるようになっていたのだ。


こんな簡単トリック、少し練習すれば誰にでもできることだった。


文夫が引き抜いた指サックの中から赤いハンカチが出て来る。


ハンカチが通常よりも小さいサイズなのは、指サックの中に収納しなければならないからだ。


ハンカチが床に落ちた瞬間星斗が青ざめる。


「なにすんだよ!!」


星斗は文夫につかみかかる。


文夫はグッと唇をかみしめて星斗を見ていた。


「仕方ないんだ。こうするしか、方法がなかったんだ」


文夫が苦しげにそう言う中、鬼たちからはブーイングが起こっていた。


「なにそれ、超つまんないんだけど」


「ネタバレうける~」
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