地獄船
☆☆☆

血にまみれた星斗の体はすぐに広間の隅へと移動され、子鬼たちの食事になっていた。


青い顔をした文夫が戻って来るのを見て、俺は少しだけ体をずらした。


できれば文夫に近づきたくない。


そんな気持ちの表れだった。


「仕方のないことかもしれないけど、最低なことだよ」


小恋がそんな風に言ったが、文夫はなにも答えなかった。


文夫が星斗を裏切ったことで、俺たちの関係は確実に変化していた。


仲間さえも疑ってかからないといけない。


文夫のせいで、みんなで協力するということが困難になっていく事も明白だった。


「じゃぁ、次はお前ら全員中央に移動して来い」


まだ気持ちの整理がつかないまま、鬼にそう言われて移動していく。


広間の中央に流れていた星斗の血はすでに綺麗になくなっていた。


子鬼が掃除をしたようだ。
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