君の腋を舐めたい


“いやいっつも出番無いじゃん!?”
と言いたくなったけど、

昨夜の一悶着の現場にはこの人はいなかったし、あんまり当たらないようにする。


この男・・豊川テツ刑事は、全く別の意味で生活安全課の中で有名な人だった。


“税金泥棒”、“お荷物”、“喫煙所のヌシ”。


大体見かけるのは昼を過ぎてから。

刑事のくせにほとんど外に出払わずに署内にいる。

刑事課の部屋で梅田刑事課長とお茶を飲んでるか、喫煙所で煙草を吹かしてるだけ。


顔色はいっつも悪くて、

シルバーカーをあげたくなるぐらい猫背で、
ご老人より歩くスピードが遅い。


なにより・・何十歳も歳下で後輩の私に対して、いつも覇気無く敬語で話し掛けてくる、

とにかく弱々しい情けないオッサンだった。



「水沼巡査長。」


「!?・・水沢です・・!!」


「ゴホッゴホッ失礼しました。」


「なんですか?」


「来客のようです。
すぐにお戻りになったほうがいいですよ。」


「・・・・?」


「お若い女性が一人、受付に行きました。」


「・・・・なんで分かるのよ。」


「ここに座っていても、
お節介な者が私に教えてくれます。」


「・・・???」

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