君の腋を舐めたい
年齢は・・30代~40代ってところかな・・。
身なりが整っていて、一見すればオシャレなカフェが似合う紳士。
「・・・見た?」
<確認しました。>
ホットコーヒーを注文した後、
メニュー表を返す際に、さりげなくリサちゃんの手に触れやがった・・。
確かに・・あんなにさりげなく振る舞われたらハラスメントと訴えにくい・・。
<リサちゃんから聞いた“いつもの流れ”だと、
この後コーヒーを持ってくるリサちゃんに雑談を仕掛け、
長い時には10分以上話し込んできます。>
「ねぇ福ちゃん。名前が分からなくても、
セイズ市内に住む“藤子”っていう苗字ってそんなに多くないんじゃない?」
<あ、言われてみればそうですね。>
「今日帰ったら調べてみてくれる?
この男の素性。」
<了解しました。>
視線に気付かれないよう、一気に眠気が襲ってきそうな文庫本に視線を落としながら、
さりげなく藤子の様子を伺う。
一人席に座るこの男は、スマホを眺めることも本や新聞を読むこともなく、
ずっとボ~っとしながらコーヒーの到着を待っている様子だった。