君の腋を舐めたい


福ちゃんが仕掛けた雑談のおかげで、藤村店長が語り始めちゃったじゃん・・!!


“さっさと切り上げて行くよ”
と隣の席へ視線を送る。


「スランプから抜け出せたのはリサのおかげなんです。」


「「え・・?」」


「あの子は気遣いが出来る優しい子ですから。私が悩んでいた事に気付いていたようで、

休憩時間の合間に、
コーヒーを煎れてくれたんです。」


「おぉ~プロフェッショナルに対して、
あえてそこで勝負に出たんですね。」


「正直、10点満点中2点の不味いコーヒーでした。

でも、あの子の優しさと笑顔が嬉しかったので“美味しい”と嘘をつきました。

不味いコーヒーを舌が感じたからかもしれませんが、

もう一度、自分のコーヒーに何が足りないのか、何故6点になってしまっていたのか、

初心に立ち返ってスランプを抜け出したんです。」




藤村店長の話を聞きながら、
私の頭には全く別のものが浮かんでいた。


昨日ヨシトから聞いた・・
あのジジイのアドバイス。


“被害者は、嘘をつきます”


怯えながら私達にSOSを送った涙の視線。今の藤村店長の話。


リサちゃんが嘘をつく子だとは思えない。


生活安全課の人間として、

これまでたくさんの人達、
たくさんの学生の子達と出会ってきた。


だから分かる。

あの子は本当にストーカーという黒い影に怯えて、必死に私達に助けを求めてきた。


・・・・・・・うん。

あんな“人の命”を何とも思ってない点数稼ぎジジイの言葉は真に受けないようしよう。


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