君の腋を舐めたい
・・・なんでだろう・・・。
涙が止まらない・・・・。
顔も知らないのに、会った事も無いのに、ヨシトから話を聞いてただけなのに、
突如として犯罪者に命を奪われてしまったお婆ちゃんの事を考えると・・
悔しくて涙が止まらない・・。
同じ立場、同じ桜の代紋に誓った同業者なのに・・・あそこから何も動かず、
まるで他人事のように煙草だけ吹かしてるあの男の事を考えると・・
怒りを通り越して涙が止まらない・・。
「水沢巡査長。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「目の前の魚にこだわりすぎるのは良くありません。
目の前で“魚の影”が見えている事に囚われすぎて、周りが見えていないのは危険です。
あなたが釣り糸を垂らすその池には、
もっと凶暴で大物の魚が泳いでいるかもしれません。」
「・・・・・・・・・・・。」
「【身近すぎる】からこそ、
見えない事もあります。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
ボソボソと私への話し掛けをやめない豊川の言葉に一度も振り返ることなく、
目尻を拭って館内へと戻った。
第6章 完