俺様外科医との甘い攻防戦

 あれは『お願い』ではなく、もはや『脅し』だ。

『急がないけど、早めに』って意味がわからないし、『襲って、嫌われたくない』って裏を返せば、襲いそうだと言っているようなもの。

 キス、はしている。
 お試しで付き合うことになり、強引さに押され、一緒に暮らしている。

 自分の気持ちに気づいたばかりで、はいそうですか、とは差し出せない。

 お互いに大人だ。お試しとはいえ、大人同士が付き合っていて、自然な流れなのはわかる。

 けれど……。

 久城先生の胸に、自信を持って飛び込めない。
「好きです」と、口に出して伝えることが憚れる。

 久城先生が、どうして私と付き合おうと言ったのか。
 私を好きだから、とは到底思えないのだ。

 久城先生から感じるのは親愛で、恋人に向ける熱烈な愛情とは思えない。

 聞けば教えてくれるのだろうか。

 どうして、私と付き合おうと思ったんですか?
 私のこと、好きなんですか?
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