俺様外科医との甘い攻防戦

「自分に惚れさせるんだよ。簡単だよね。蓮弥にかかれば。俺より硬派に見えて、信用できるだろうから」

『自分に惚れさせる』この言葉が何度も頭の中で行ったり来たりする。

「それで、惚れたら惚れたで、ぽい。前の辞めさせられた看護師、知ってる? あの人だってそう」

「嘘……」

 思わずこぼれた言葉を聞き、東雲先生はニッコリと笑う。
 穏やかな表情なのに、背筋がゾクリと寒くなった。

 誰かが近づいてくる足音を聞き、振り返ると若い看護師。

「東雲先生。今日のご予定は?」

「ああ、ごめん。ごめん。もう用は済んだよ」

 病院内だと忘れるほどに、近い二人の距離に目眩がする。

 違う。
 この目眩は……。
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