俺様外科医との甘い攻防戦
久城蓮弥side:届かないのなら
陽葵に本気になったのは、自分でも最初は自覚がなかった。
陽葵に話しかけたきっかけは、本当に律紀に憧れているであろう陽葵を、助けるためだった。
それなのに陽葵は俺に見向きもしなくて、ちょっかいをかけてやっと照れた顔を見せる程度。
その照れた顔が思いの外、かわいかった。
だから、ついつい必要以上に構いたくなった。
そして、陽葵の同僚の河合さんだったか。
陽葵が『歩美』と呼ぶ、その人からのメールを読み、劇的に自覚させられた。
その上、ご丁寧なほどお手本通りのクズ男といて騙されかけている。
放っておけない、なんてもんじゃない。
今すぐに俺のものにしなければ、誰かに盗られるかもしれない。
無理矢理、お試しでと付き合わせて。
必死過ぎて笑えない。
それなのに当の本人は、律紀が若い看護師と親密にしている姿を見ただけで、ショックを受け、俺の前から逃げ出すくらいに、律紀に想いを寄せていたとは。
僅かな時間を過ごすうちに、俺に好意を持ってくれているかもしれない。
そんな淡い期待は、泡のように消えた。
自棄になって、俺に抱かれようとする陽葵を止めようともせず、自分の欲望を放って。
どこまで、俺は……。