俺様外科医との甘い攻防戦
続く攻防戦
目が覚めると、久城先生の姿は見えなかった。
気怠さを感じつつも、早くここから逃げなければと焦る。
ベッドから降りようとして、体が揺らぐ。
えっ。落ち、えっ。
既のところで、腕を引っ張られ、ベッドに逆戻りする。
「なにをしているんだ」
洗面所かどこかにいたであろう久城先生が、今はベッドの脇で仁王立ちをしている。
「体が言うことを聞かなくて……」
シーツと布団を手繰り寄せ、体を隠すのとバリケードのつもりで久城先生と距離を取る。
「初めてなのに、無理をさせたな」
ボッと音が鳴りそうなくらい、一瞬で顔が熱くなる。
ベッドに片足を乗せられ、距離を簡単に詰められて逃げ場がない。
久城先生は手を伸ばし、頬をくすぐるように撫でる。
「自棄になったからといって、俺としたいとは思ったんだよな? 少しは勝算があるか」
「なん、の、勝算」
「陽葵が、俺を好きになるかどうか」
この人はなにを言っているの?
だって、そんなの、それが一番、久城先生が困るはずで。