俺様外科医との甘い攻防戦

 黙りこくる私に、久城先生は眉尻を下げ私の髪を梳かす。

「体から、好きにさせようか。経験が無さそうだから踏み込めずにいたが、昨日の感じなら……」

 髪を梳かしていた手は、妖しく肩からシーツの中へと伸ばされる。
 その手を阻むように、シーツをギュッと胸に抱く。

「知って、いたんですか? 私、未経験だなんて言ってませんよね?」

「それは、まあ。軽いキスだけで、あんなかわいらしい反応されたら、ね」

 全て知られていたんだ。
 それで手のひらで転がされていたなんて。

 悔しくなって、言わなくてもいい憎まれ口を叩く。

「そしたら、『初めての男』なんて面倒なことしなくても。それとも、そういう女の子を食べる趣味が!」

 後頭部を支えられ、唇を塞がれる。

 そして、今までみたいにおでこを擦り寄せられる。

「『初めての男』というので特別になれるのなら、俺のこと忘れるなよ。初めてが面倒と思うのは、遊びの相手にだろ」

 日本語が急にわからなくなった気がして、目を瞬かせる。

 しかも掠れて消えそうな声で『俺のこと忘れるなよ』だなんて、胸が締め付けられて困る。
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