俺様外科医との甘い攻防戦
8時半のミーティングに合わせ、更衣室で着替えを済ませる。スクラブと呼ばれる制服は『ごしごし洗う』という意味の『スクラブ』をそのまま取ったらしく、どんなに洗っても平気そうな丈夫な生地。
落ち着いた青色の半袖で浅いVネック。作業療法士がこの色に対し、理学療法士は深い赤紫だ。
作業療法士よりも理学療法士の方が、世間一般には耳馴染みがあるかもしれない。
どちらも病気や怪我などをした患者に対し、リハビリをしていく専門家である点に違いはない。
理学療法士は体の大きな動きのリハビリをするのに対し、作業療法士は手の動作や指の細かい動作などのリハビリを主にしている。
患者の病状や回復状況に合わせ、医師が手術後のスケジュールを決め、それに従いリハビリをしていくのだ。
ミーティングの時間になり、主任の周りに作業療法士が集まり、それぞれにメモ帳片手に耳を傾ける。
「502号室の田中さん。本日からリハビリ予定でしたが、夜間に発熱したため変更になります。河合さん、後日新しいスケジュールの連絡があり次第お願いしますね」
「はい」
担当予定だった歩美が頷いて、メモ書きをしている。