俺様外科医との甘い攻防戦

「だって、私。近いうちに捨てられるんですよね?」

「誰が」

「だから私」

「は? お前、もう律紀とそういう仲に⁉︎」

 興奮して声を荒げた久城先生が、「いや、待て。俺とが初めてだっただろうが」と独りごちる。

「一旦、整理しよう。陽葵が好きなのは、律紀……というか東雲先生だろ?」

 東雲律紀。律紀なんて名前、かっこいいなって思っていたのに、そういえば東雲先生の名前は律紀だった。というくらいの感想しか出てこない。

「憧れの人は、憧れていただけだって、何度も」

 久城先生は額に手を当てて、顔を覆う。
 この姿をしているときは、困っているときだとこの頃わかるようになってきた。

「待て。ちょっと待て。律紀が、看護師と歩いていただろ。それを見て、陽葵は酷い表情で」

「それは、違って」

「違うわけあるか。そしたらどうして俺の顔を見て、逃げたりしたんだよ!」

 詰め寄られ、言葉に窮する。
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