俺様外科医との甘い攻防戦
「久城先生、今は誰とも付き合う気はないって」
「は?」
眉間に皺を寄せ、険しい表情を浮かべる。
「あの、カフェの前で言い寄られていた看護師の方に、そう指摘されていました」
「ああ。あれか。よく覚えているな」
ため息を吐く久城先生にとっては、取るに足らない出来事かもしれないけれど。
「確かにあの時はそうだった。でも今は違う。陽葵。俺の気持ち、伝わってないのか」
寂しそうな声色が、胸を切なくさせる。
「久城先生の気持ちってなんですか? 東雲先生に引っかからないように、助けたかったという気持ち? それだけのために、好きでもない女を……」
腕を引っ張られ、胸におでこが当たる。
自分で言って惨めになって、最後まで言葉で言い表せなかった。
ハラハラと目からは涙がこぼれ、久城先生のシャツを濡らす。