俺様外科医との甘い攻防戦

 ミーティングでは主に担当する入院患者の夜の様子、体調が急変していないかなどの申し送りを夜勤の看護師から受けている場合は、ここで伝えられる。

 私の担当している患者は、特に懸念事項はないようだ。

 ミーティングを終え、9時から始まるリハビリの準備へと取りかかる。最初の患者は脳梗塞で緊急搬送され、カテーテル手術をした市原さん78歳の男性。

 以前は意欲的に体を動かすタイプの方だったのだろう。若々しくガッシリとした体格をしている。

 近年リハビリは早く始めた方がいいとされているため、市原さんはカテーテル手術後すぐ体調を見つつ、手足の関節を無理なく動かす関節可動域訓練を行なっている。

「市原さん、ペグボードやってみましょうか」

 リハビリステーションに現れた市原さんに声をかけてみても、口をへの字にしたままやろうとしない。

 作業療法士としてのリハビリには『ペグボード』を使う。ボードにいくつも穴があいており、その穴にペグを差し込んでいく。
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