俺様外科医との甘い攻防戦
穴の開いた板に、はまるように棒を差し込む。まるで幼児の知育玩具のような見た目が、年配の特に男性には受け入れ難いようだ。
「こんな子ども騙しのやり方は好かん」
そう言うとそっぽを向いてしまった。
理学療法士の方が体を使ったリハビリをする。平行棒を使い歩いてみたり、または患者の腕をマッサージしながら回したり。
きっと市原さんのイメージする治療やリハビリは、そっちなのだろう。
「見た目の派手さはありませんが、少しずつ無理なく動かすことが大事なんです」
麻痺が出ている右手を握り、マッサージするように撫でる。
例え僅かだろうと動かした方がいい。意地を張って動かさずにいればいるほど、筋肉が萎縮し固まってしまう。そうなってからでは回復が難しい。
けれど、どんなに言い連ねても私に心を開いていない市村さんには伝わらないだろう。自分の力量の足りなさに不甲斐なくなる。