俺様外科医との甘い攻防戦
「『きみの声、眠くなるから子守唄を歌ってくれない?』って無茶振りされました!」
当時の恥ずかしかった気持ちも込めて睨むと、あの日と同じ笑顔で笑われた。
「歌ってくれなかったじゃないか」
「歌えませんよ! 仮にも病院ですよ? だいたい、やっぱり久城先生も、誰彼構わずじゃないですか!」
「なにが? まさか、手術直後で襲いそうって、そこに着目するわけ⁉︎」
憤慨したように目を見開かれ、つい吹き出してしまった。
「酷いな。真剣に気持ちを伝えているというのに」
「ごめんなさい。どこか夢見心地で」
「俺、誰彼構わず手を出したことはないし、陽葵と出会ってからは、陽葵を振り向かせることに忙しくて」
「東雲先生の毒牙から、守らなきゃいけなかったですからね!」
ついつい茶化すと、久城先生はため息混じりに言う。
「途中からは、本気で落としたかった。だから、これからもずっと一緒にいてくれないか」
真剣な口調に、笑みを消し、久城先生を見上げる。
「結婚しよう。陽葵」