俺様外科医との甘い攻防戦

「お前、陽葵がそういうことを気にする子だとわかっていて、暴露してるだろ」

 額に手を当てた久城先生は、苦虫を潰したような顔をしている。

「自分の家は、常に人がいて落ち着かないと言って、律紀の家に入り浸っていたような奴が、女の子に自宅の鍵を渡すとなれば、応援もしますよ」

 肩に手を置き、涼介さんは立ち上がる。

「ふたりで話す時間が必要だな。結婚するんだから、腹をくくれよ」

 励ますように言い、出て行った。

 残された部屋は、なんとも言えない空気が漂う。

 ただ、だからベリーヒルズビレッジのレジデンスに住んでいるのだと、合点がいった。

「悪い。隠すつもりはなかったんだ」

「あの、私、不釣り合いですよね?」

 自然に流れ出た言葉は、久城先生の顔を曇らせる。

「だから嫌だったんだ。俺、久城蓮弥という普通の男だ。それじゃダメか?」
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