俺様外科医との甘い攻防戦
「だって、その、許嫁とかいても良さそうじゃないですか」
久城先生は、どこか吹っ切れたように話し出す。
「ああ、いたかもな。見合い話も山のように持ってこられた」
「それなら……」
それなら、なんなのか。
言葉が続けられずにいると、久城先生が代わって話し出す。
それは聞いていて、胸が締め付けられるようだった。
「常に家に他人がいて、母親の手料理を食べたことのないような生き方、したかったわけじゃない」
サンドウィッチを作って渡したとき『初めてだ』と、喜んでくれたのは、大袈裟ではなく本心からだったのだろうか。
「親には随分反発した。ひとりになりたくて、一人暮らしをしてみても、涼介が言うように生活能力が皆無だから。結局は掃除や料理を人に頼んで」
「でも、キッチンは使われてなかったみたいで……」