俺様外科医との甘い攻防戦
かろうじて自立した久城先生に、抱き寄せられる。
「そういうとこだよ。陽葵の好きなところ。自分のことよりも人の心配をして」
頭にキスを落とし、体を離される。
「今は俺とのこれからのことを、よく考えてくれ。そのためにはひとりの方がいい」
「でもっ!」
私ばかりが焦った声を出し、久城先生は冷静に話し続ける。
「もしも、陽葵が俺から離れる選択をするのなら、整形外科の高橋先生にどこかいい病院を紹介してもらえるよう手配する」
それはふたりの別れを意味している。
そして金輪際、久城先生と関わらないという選択。
それはそうだ。
婚約破棄になるのだから。
夢見心地な日々から一点。
重大な決断を託され、部屋にひとり立ち尽くし、しばらく動けなかった。