俺様外科医との甘い攻防戦
そもそもが忙しい久城先生と会えなくなり、早一週間が過ぎた。
同じ病院に勤めているはずなのに、顔さえ合わせない。
今までどれだけ久城先生が、私を気にかけてくれていたのか。
どれだけ僅かな時間を見つけ、話しかけに来てくれていたのか。
それも悪目立ちせず、私に気を遣わせず、ごくごく自然に。
外堀から埋められ、結婚を迫られた。
そんな考えは空想だと気づく。
久城先生は、私の立場を考えに考えて動いてくれていたことを、今さらながら痛感する。
答えはとうに出ていて、それを伝える術と勇気を持っていない。
結局、久城先生のプライベートの連絡先は知らないまま。
聞く機会を逃してしまっていた。
終業時間は過ぎ、久城先生の予定を職場のデータでチェックする行為が習慣になっている今日この頃。
今日は手術が無事に終われば、明日休みをもらえる予定だ。
この休みに話が出来なければ、また話す機会が遠のいてしまう。
私は決心を固め、看護師の北川さんに話を通してもらおうと、スマホを手にした。