俺様外科医との甘い攻防戦
「かわいい子の前で、こんな簡単な作業もできずに恥をかきたくない男心がわからんかねえ」
「そんなっ。懸命にやられてる方を笑ったりしません!」
思わず両手で右手を握りしめると、市原さんは眉尻を下げる。
「ちょうど孫が奥村さんくらいだ。じいちゃん頑張れ頑張れってとこだなあ」
「そうそう。その調子です。進捗状況は奥村さんに逐一報告をもらっているので、サボったりしたらダメですよ」
そこまで言うと、久城先生は立ち上がって「あとは奥村さん、お願いしますね」と出口の方へ歩いていってしまう。
「奥村さん、久城先生お見送りしてあげな」
「え、でも」
「最初から見られてると緊張するしなあ」
市原さんが顔を崩して言うものだから「すぐ戻ります!」と久城先生の後を追った。