俺様外科医との甘い攻防戦

 メールを入れ、マンションで待っていると伝えてもらうつもりだった。
 メールを入れると、時を待たずして電話がかかってくる。

「はい。陽葵です」

「陽葵さん? 茉莉香です」

 同じ久城家の婚約者として相談し合う機会が増え、北川さんとは茉莉香さんと陽葵さんと呼ぶ仲になっていた。

 ただ今回のことは、茉莉香さんに話せていない。
 茉莉香さんももし久城家の家の事情を知らなかったとしたら、私から漏れ伝えるわけにはいかない。

「久城先生の体調がここ最近、優れなくて。喧嘩でもされましたか? ご自宅にも戻っていないようで」

「それは、えっと。すみません。ご心配をおかけして」

「それはいいんです。ただ、今にも倒れそうな顔をして、今日はマンションに戻ると仰られて。本当に倒れているといけないので、陽葵さんにご連絡だけでもと」

 仮眠室で過ごしていたから……。
 申し訳なくなって、胸が痛い。

「わざわざありがとうございます。急いで帰ります」

「ええ。よろしくお願いしますね」
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