俺様外科医との甘い攻防戦
思わず駆け寄って行くと「陽葵!」と、力強く抱き寄せられる。
「大丈夫か? 具合が悪そうだった陽葵からの電話が突然途切れ、倒れたかもしれないと」
「え? 私は久城先生が……」
しばらく逡巡し、ふたりでため息を吐く。
「そうか。北川さんに、はめられたな」
「はい。まんまと」
勢いで抱きついてしまって、居心地の悪さを感じ、離そうとした体を改めて抱き締められる。
「久城、先生?」
「陽葵。もう少しだけ。倒れただなんて、最悪な事態を想像して……」
それは私も同じだ。
「蓮弥さん……。蓮弥さん!」
溢れ出した想いが、頬を伝って流れていく。
ただ、ここに久城先生がいることを実感したくて、しがみつくように体に腕を回す。