俺様外科医との甘い攻防戦

 私は気になった続きを聞きたくて、普段なら流してしまう心の引っ掛かりに正直になる。

「『ただ』なんでしょう。すごく気になります」

「ああ。陽葵の気持ちを聞いたら、教える。気持ち、固まったか?」

 おずおずと頷くと、久城先生の喉が上下したのがわかった。

「私……」

「うん」

 目を見て伝えることが出来なくて、自分の足先を見つめて言う。

「蓮弥さんの、傍にいたい」

 どんな表情をしているのか、怖くて顔を上げれない。

「ごめんなさい。呆れますよね。『持ち帰らせてください』とか言っておいて」

「陽葵?」

「もっと劇的な「あなたのためを想って身を引きます」みたいな言葉を期待しますよね」

「陽葵!」

 腕を引かれ、抱き寄せられる。
 顔がいつもの胸元に当たり、止まらなかった言葉が遮られる。

「そんな期待していない。そんな言葉いらない。『傍にいたい』これ以上の言葉があるわけないだろう?」

「だって、私は不釣り合いで」

「もう黙って」

 力強く抱き締められ、言葉は続けられない。
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