俺様外科医との甘い攻防戦
数日経った終業後。久城先生に借りた本を胸に、4階へと上がる。
さすが脳神経外科のエースであり、若き名医と言われているだけはある。専門書はとても分かりやすかった。
その上、専門書には何度もページをめくった跡に、重要だと思う部分にはマーカーが引かれていた。
なにもかもに恵まれた天才の、生まれ持った才能なのだろうとばかり思っていた。医師としての彼の努力に頭が下がる。
4階の医局は診療科ごとに分かれており、私が関わるのは外科医の先生が多いが、ほかのさまざまな医師を見かける機会もある。
とは言え、今は午後6時過ぎ。医師の多くは病棟の回診に行っているため、ひと気はあまりない。
あ、東雲先生。
目線は、視界の隅に映った人影の後を追う。
そこには東雲先生と若い看護師。
かなり離れてはいるものの、シルエットでわかる。