俺様外科医との甘い攻防戦

 突然大きな手で目隠しをされ、心臓が鼓動を速める。

「まだよそ見しているのか。俺にしておけって言っただろ」

 耳元で囁かれるのは、どこか窘めるようないつも以上に甘いバリトンボイス。

 心揺さぶられ、惑わされる前に回されている腕を振り払う。
 想像した通りの人がそこには立っていて、不敵な笑みを浮かべている。

 久城先生。

 また気づかないうちに、背後から近づかれた。その上、何度も動揺させられ言葉尻が強くなる。

「私、憧れている人がいるって何度も!」

「ああ。だから俺にしろよ」

 深い漆黒の瞳に熱く見つめられ、目を逸らせない。
 
 私の前に回り込み立ちはだかるようにしている久城先生越しに、東雲先生たちが見える。
 ふたりは通路の陰に身を寄せ、親しげだ。

 視線が久城先生から逸れていると感じ取ったのか、有無を言わさずに手を引かれる。

「く、久城先生?」

「食事。今から付き合って」

 強引に連れられる手は、痛いくらいに強く握られていた。
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