俺様外科医との甘い攻防戦
連れて来られたのは高層オフィスビル。オフィスに用事があるわけではないのは、明確で。
オフィスの階には止まらずに、上層階のレストランや、バーに直通のエレベーターを待つ。
そこで久城先生はスマホを手にした。
「俺だ。急で悪いんだが、個室を用意できないか。ああ、今すぐ」
『個室』という単語にギョッとして目を剥く。
「ちょっと! 久城先生!」
抗議をぶつけても久城先生は掴んだままの手を持ち上げ、手の甲にキスを落とす。
その妖艶な姿になす術なく、言葉が続けられない。
親指で口付けたところをそっと撫で、赤くなる私を見つめるとフッと息を漏らすように笑う。
「ああ、助かる。わかってる。この礼はどこかで」