俺様外科医との甘い攻防戦

 悪戯を仕掛けておいて、自分は平然と電話を終えると「食事、付き合ってくれるよな」と、今さらの確認をされた。

「離して、ください」

「ん? ああ」

 白々しく掴んだままの手に視線を落とし、ゆっくりと解かれる。
 ようやく解放された安堵感と、急に自由になった心許なさから、自分の手を捕まえて胸に抱く。

「お断りします、と言ったらどうなるんですか?」

「たった今、急いで用意してくれている友人が落胆するだろうな」

 肩を竦める久城先生に、だったら先に私の都合を聞いてからにしてほしいと憤慨する。
 どうせ断らせるつもりは、はなからないのだろう。

「貸し、あるみたいだしな」

 そう言われては、もう腹を括るしかない。
 ただ食事するだけ。それで久城先生の気が済むのなら。
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