俺様外科医との甘い攻防戦
軽い到着音を鳴らし、エレベーターが開く。
久城先生は扉に手を添え押さえながら「どうぞ」と促す。
仕方なくおずおずと前に進み出ると、久城先生も続いて乗り込んだ。
「久城先生、お仕事はよろしいんですか?」
「回診は済ませ、休憩を取ると言ってある。もともと奥村さんを誘うつもりでいたところへ、きみが来たってわけ」
「飛んで火にいる、なんとやらですね」
「ハハ。そんなに簡単じゃないでしょう。奥村さん」
意味深に言われ、訝る視線を向けても久城先生は意に介さない。
濃紺のスリーピースをサラリと着こなし、長い脚を持て余すように交差させて立つ。
どこか気怠げなのはいつも通りなのに、白衣よりも色気が漂っている気がするのは、気のせいなのだろうか。