俺様外科医との甘い攻防戦

「予約した久城です」

「はい。お待ちしておりました。久城様」

 品のいいウェイターに案内され、席まで進む。落ち着いた店内は、温かな照明が上質な空間を演出する。窓は見晴らしが良く、素晴らしい景色が望めそうだ。

 通された個室の扉を開けた途端、息を飲む。
 美しい景色がすぐ目の前にあった。

「お気に召していただけましたか?」

 ウェイターと交代して、いつの間にか別の人が立っている。
 この人が久城先生の友人なのだろう。
 久城先生は親しげに話す。

「さすがフロアーマネージャー」

蓮弥(れんや)が珍しく来店するとなれば、多少の強引さも目をつぶる。しかも相手が女性となれば尚更」

 電話口の声が、漏れ聞こえたのかもしれない。
 関係性を誤解されていそうで、居心地が悪い。

「お席へどうぞ」

 勧められ前に進み出ると、窓に向かって二脚の椅子。
 カウンターのようなテーブルは、隣同士で座る個室らしい。

 完全に恋人用なのでは。

 恨めしげに久城先生に視線を送ると、あからさまに目を逸らされた。

 座らないわけにもいかず、渋々座る。
 久城先生もなにも言わずに隣に腰掛ける。
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