俺様外科医との甘い攻防戦

「奥村さんってお化け信じているタイプ?」

「なんですか。急に」

 思ってもみなかった質問をされ、答えに窮する。

「俺が声をかける度にすごく驚くから、もしかしてって」

「それは、久城先生が足音もなく近づいてくるから……って、やめてください! 足音がしないのは、実は幽霊で足がないんですってオチですか⁉︎」

 こわごわ、テーブルの下に視線を向けると吹き出された。

「オチってなに。テレビの見過ぎじゃない? だいたい病院はお化けや幽霊よりもっと怖いものが……」

「や、やめてくださいよ。明日からも仕事続くんですから」

 腰が引け気味の私に、久城先生は気の抜ける答えを告げる。

「朝方の当直医。ぬぼーっと立ってると肝を冷やす。あれだと思うな。幽霊騒動の発端」

「菊池先生なんてさ」と、日頃から青白い顔をしている不健康そうな先生の名前を挙げ、ふたりして笑う。
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