俺様外科医との甘い攻防戦

 すっかり笑い合ってから互いの呼吸が落ち着くと、見計らったように久城先生は静かに質問をした。

「憧れている人と付き合いたいって思ってる?」

 おいしい料理に舌鼓して笑い合って。
 それなのに、不意に核心をつく質問をされ咳き込んでしまう。
 それでも真剣な眼差しを向けられて、思わず姿勢を正す。

「憧れは憧れと、自分の身の丈は心得ているつもりです」

「そう。それなら俺と……」

 全てを言われる前に、被せるようにして言い切る。

「私、医師は嫌いなんです」

 目の前の景色を見つめながら、嘘偽りない思いを伝える。
 窓一面の夜景は遠くまで続く高層ビルの照明や、車の流れるライトが眩く揺らめいている。

「医師は嫌いというと語弊があります。久城先生も含め、患者さんの命を救うお医者様は尊敬しています。異性として、医師をご職業にされている方は嫌いという意味です」

「そう」
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