俺様外科医との甘い攻防戦
久城蓮弥side:もったいない
呼び出された手術は緊急性を要したとは言え、神経内視鏡手術になったため短時間で済むものだった。
このまま家に帰れる。
どこか浮き足立っている自分に苦笑しつつ、スマホを確認する。
涼介からメールが入っていた。
『蓮弥のお姫様に、カードキーと伝言を預かった』
一行目で失笑を漏らす。
「そう簡単に行くわけないか」
ぼやきつつ、続きを読む。
『これほど大事なものを、簡単に他人に渡してはいけません』
「ハハ。お説教」
奥村さんが言った言葉を、そのまま送ったのだろう。
口調は奥村さんのものだ。
スクロールして、続きを表示させる。
『できない約束は、するものではありません』
別れ際に言ったあれだろうか。
『奥村さんが家で待っていてくれるのなら、早めに帰れるように努力する』
確かに手術がどうなるのかわからない。
長時間に及ぶ手術だとしたら、連絡さえできない。