俺様外科医との甘い攻防戦

「できない約束、ね」

 誰に言うともなく呟き、メールはまだ続きがあることに気づく。

『彼女から受け取ったカードキーは、蓮弥のマンションのコンシェルジュに渡しておいた』

『悪かったな。迷惑かけた』

 メールを送ると、待ち構えていたように返事が来る。

『珍しいよな。蓮弥がここまでなりふり構わないの』

「ハハッ」と乾いた笑い声を上げ、髪に手を差し入れる。

「本当、なに必死になっているんだか」

 呆れた声が出て、ますます可笑しくなる。

 その上、メールがもう一件入って吹き出した。

『ま、簡単に家に上がるような女だったら、興味も沸かないだろうがな』

「そんなんじゃねえよ。そんなんじゃないんだよ」

 呟いた声は虚しく宙に消えて行った。
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