俺様外科医との甘い攻防戦

「作業療法士さんも大変だねえ。おっと、これはまだ難しいな。細かい作業はどうもいけないね」

 取りこぼしたペグを拾い上げ、面目なさそうな顔をする。

「いえ。ずいぶんスムーズですよ。変化を実感するためにタイムを測ってみますか? タイムを縮められると、やる気にも繋がりますよ」

「いや〜。それは緊張しそうだから、まだダメだ〜。奥村さん、顔に似合わずスパルタだね」

「いえいえ。無理にとは」

 市村さんは久城先生の声かけで、嘘みたいにやる気を出してくれた。

 久城先生との砕けた雰囲気を垣間見せたせいか、私ともあれ以来打ち解けて話せている。

「血が怖いのなら、久城先生にでも相談してみたら」

「へ」

 素っ頓狂な声を上げ、市村さんを笑わせてしまう。
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