俺様外科医との甘い攻防戦
私、奥村陽葵は平凡な26歳。都波中央総合病院の作業療法士をしている。
外見は可もなく不可もなく。身長は158センチ。長めの髪は仕事で邪魔にならないように、いつもひとつに結んでいる。
丸顔で父に似て垂れ目なのが、昔はコンプレックスだった。いつも年齢よりも下に見られるから。けれど今は、これも自分だと受け入れている。諦めていると言うべきかもしれない。
医師や看護師などを交えた意見交換会を終え、帰り支度をしていると同僚の河合歩美に声をかけられた。
「陽葵この後、ドクターとの飲み会なんだけど、どう?」
「私はいいや。勉強したいし」
歩美は医師との結婚を目論んでいて、日々出会いを求め邁進している。包み隠さず、公然と募集しているところが清々しくもある。
「また〜? 勉強熱心なのは偉いけど、たまには息抜きも大切だよ?」
「うん。ありがとう」
呆れ半分の歩美の背中を見送りつつ、再び帰り支度に勤しむ。