俺様外科医との甘い攻防戦
「陽葵。お客様が外でお待ちだったから、用件を聞いておいたよ」
帰っていったはずの歩美が再び顔を出し、デスクに近づいてくる。
「お客様? ありがとう。なんだった?」
パソコンから顔を上げると、ニマニマとなにか良からぬことでも考えていそうな歩美と目が合う。
「リハビリステーションの前でお待ちいただいくと、ものすごく目立つから場所を変えて待ってもらえるように頼んでおいた。カフェ・オラージュに」
「ん? うん」
カフェ・オラージュは、ベリーヒルズビレッジから歩いて5分の距離にある隠れ家的なカフェ。
のんびりしたいときに歩美とランチを食べに行くくらい、お気に入りの場所で。
顔を近づけてきた歩美が耳打ちする。
「久城先生」
「は⁉︎」
目を見開いて歩美をマジマジと見つめれば、意味深に数度頷かれる。
「『終わるまでここで待っている』なんて言うからさ。あの風貌で待たれると噂の的じゃない」
「あ〜。うん。そうだね」
目を泳がせ、最悪な状況を頭の中に思い描く。誰を待っているのかという憶測が憶測を呼んだところへ、私が現れて……。
そんなの非常にまずい。