俺様外科医との甘い攻防戦
見慣れた店内に久城先生の姿があるのは、不思議な感覚だった。
だだ、ここでもとても目立っていて、周りの女性がチラチラと意識しているのがよくわかる。
躊躇しつつも彼の連れだとウェイターに告げ、久城先生の元へと歩み寄る。
「お待たせしてすみません」
頭を下げると手にしていたコーヒーをテーブルに置き、こちらに穏やかな表情を向ける。
「俺が勝手に待っていたんだ。謝る必要はない」
強引なくせに、どんな立場の人にも礼節をわきまえて接するところは尊敬している。
久城先生を、人として嫌いなわけじゃない。
4人掛けのテーブル。久城先生の斜め前の椅子を引き、腰を下ろす。
そしてバッグの中から借りていた本を出し、テーブルに置いた。